真珠湾収容所の捕虜たちー情報将校の見た日本軍と敗戦日本ー

By | 2017年11月5日
真珠湾収容所の捕虜たち ブックカバー 真珠湾収容所の捕虜たち
オーテス・ケーリ
Japan
ちくま文芸文庫
2013年7月10日
文庫
365
カバーデザイン:間村俊一
カバー写真:海軍捕虜収容所で捕虜と食事を共にする著者

ホノルル捕虜収容所に、べらんめえ口調で日本人捕虜たちの度肝をぬいた海軍将校がいた。宣教師の家に生まれ、14歳まで日本で過ごした彼は、捕虜からの情報収集を担当する。アッツ、ガダルカナル、サイパンの「玉砕」。犬も鼠も食べ尽くした地獄さながらのマーシャル諸島。しかし「人情=人間主義」は国や立場を超えるという信念のもと、まず日本兵の階級意識を破壊し、捕虜は恥ではないことを徹底して説く彼の姿は、やがて捕虜たちの自発性を促す。本土に撒かれた「ポツダム宣言」の和訳のビラは、国を想う彼らの協力で生まれた。敗戦後は日本の民主化に努めた。

解説 前澤 猛

本書で読むハワイ捕虜収容所の様子はさながら学園小説のような、青春の息吹を感じさせるものになっている。

収容所で今までとは違う世界に出会った捕虜たちの心情を表すものであるだろうし、またオーティス・ケーリさんの日本文化への真摯な、そして若々しい思いからの光景であったと思う。横田正平さんの手記「私は玉砕しなかった」で示されたように第二の人生で捕虜たちはもう一度、青春を迎えたのだと思う。

本書後半で、オーティスさんの日本文化への思いが残念な形で日本の社会に阻まれていく様子が解説で紹介されている。著者の思いが本書に刻まれているだけに、どこか悲しい気持ちで読み終えたことを思い出す。