ドナルド・キーン わたしの日本語修行

By | 2017年10月15日
ドナルドキーン わたしの日本語修行 ブックカバー ドナルドキーン わたしの日本語修行
ドナルドキーン, 河路由佳,
Japanese language
白水社
2014年9月30日
ハードカバー
265
装幀:今東淳雄 maro design

生涯を決定づけた米海軍日本語学校への入学。当時の思い出が詰まった教科書を前に、学習者、研究者、教育者として、日本語とともに歩んだ人生を語る。

第二次世界大戦時にドナルド・キーンさんがハワイ大学で上原征生さんに日本文学を学ばれていたことはまったく知らなかった。このことをキーンさんから聞き出されたのは本書でインタビュアーを務められた河路由佳さんが初めてではないだろうか。先に紹介した「ハワイの声」の本文にも巻末の略歴にも大戦中の経験にはほとんど触れられていないのだ。本書で触れられるハワイに関するエピソードは決して多くない(図書館所蔵の日本文学の特徴などハワイ特有と思われる記述はまた別に興味深い)。それでも上原さんの名前に出会えたことは大きな出来事だった。

上原征生さんに、にわかに興味が出てきたのは河路さんに教えて頂いてからだ。それまでは書棚にある本の背にある名前に過ぎなかった。ただ、「ハワイ日本語学校教育史」や「電車閑人帳」等から断片的なエピソードを拾い集めても大きなジグソーパズルの中の2,3個のピースでしかなく、それを置くためには河路さんの別の研究、「日米戦争中のハワイ大学でドナルド・キーンが学んだ日本現代文学」が必要だった。今、自分の最大の関心事である戦間期の日系人学生に結びつくとも思っていなかったのである。